商品説明
〈新刊書〉アントニー・J・ノチェッラ二世ほか・編/井上太一・訳/新評論。2015年10月初版1刷。
かつて、様々な戦争被害の報告は、人間に対するものであり、人間以外の生き物に焦点を当てたものは殆どなかったと、訳者は「はしがき」で述べています。
人間の軍事活動による最大の被害者は、人間以外の生き物たちであり、私たち人間の考える「戦争」と「平和」も人間のためのものに他ならず、最大の被害者である他の生き物たちの視点で語られることはなかったと思われます。
「動物が人間の犠牲になっている様々な例をあげよ」という問いに、学生たちは数えきれないくらいの事例を挙げるが、その中に「軍事活動」という例を挙げる者は皆無であると、執筆者の一人は語っています。
このことは、人間社会と他の生き物たちとの関わりの果てしない隔絶があると言わざるを得ません。
今一度、人間の軍事活動が、人間以外の生き物たちに与えてきた苦痛を顧みて、本当の意味での「平和」とは何か?今までの平和の概念は正しかったのか?「戦争」のもたらす人間以外の生き物たちへの影響という視点を持って考えてみる時期なのではないでしょうか。
人間は、生き物の絶滅危惧種というレッドデータを作っていますが、近い将来人間自身がレッドデータに記載となり、他の生き物たちからレッドカード(地球外退場)を突き付けられないようにしたいものです。
訳者あとがきから
「いま求められているのは「平和」という概念そのものの変革である。我々は自国民のことだけ、自国の兵士のことだけを憂えるといった狭い利己的平和観を棄却し、視界の外で日々葬られていく”幾億幾兆”の罪なき魂を思い、あたうかぎりの利他的平和をこそ追求しなければならない。いまだ生存権も顧慮されず、弾が当たっても見向きもされない存在がいる。この最も無防備な生命に光を当てて初めて、真に実りある平和運動も成るのではなかろうか。」(以上引用)