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2024/07/14 15:48
1994年発刊『アラシ』(朔風社・刊)を再編集・文庫化した、ヤマケイ文庫『アラシ~奥地に生きた犬と人間の物語』(今野保・著)を読んでみた。鮮やかに彩られた、犬と人間の命の輝きが、瑞々しく綴られていた。
この作品を読んで、村上もとか『獣剣伝説』に登場する「アカ」という犬が思い浮かんだ。巨大熊と対峙する姿と北の大地の情景が重なる。「アラシ」に登場する家族は、猟師ではなく炭焼きだが、生活圏は同じように思える。
以下は、商品ページに記載したレビューをそのまま引用し、ブログとしているのでご了承願いたい。
街を歩けば犬にあたる。
いつもふしぎに思う。なぜ犬たちは、こうも広く、深く、人間の生活の中に溶け込んでいるのだろう。全く違う種類の動物が、これほどまでに緊密に生活を共にしている例が、ほかにあるのだろうか。(猫は別として)
犬の能力は測り知れない。
職業犬として活躍する姿を見れば、良く分かる。
また、人の心を温めてくれるパートナーとして、今や家族の一員としての存在の方が強いかもしれない。
人間にとって犬の一番の魅力とはどこにあるのだろうか。
また、犬にとって人間の魅力とは何なのか。
そんな問いに対する答えの一端をのぞかせてくれたのが、
まだ人間の生活も犬の生活も、野生(自然)に包まれていた頃、北海道の山間に暮らす家族と犬の物語が4話納められている。
たかだか100年ほど前のお話だが、遠い昔話のようにも思えてしまう。
もともと山で群れを作って暮らしていた犬たちの力強さ、洞察力の深さ、渓流の水の流れのように澄んだ繊細な精神性が、ザクザクと心に突き刺さってくる。
まるで、初めて人間が犬と出会った時はこんなんだったんだろうな、そしてこんなふうに絆を深めていったんだろうなと思える物語が綴られていて、胸が熱くなると同時に、犬たちの悦びと人間の幸せが非常に近いところにあって、それが犬と人間を惹き付けている一つの要素になっているようにも感じられた。
さらには、人間と人間の別れ、犬と犬の別れ、そして人間と犬の別れには、全く同種の悲しみと哀しさが滲んでいるようにも思えた。
動物の擬人化には、大きな問題があることは承知している。それぞれの生き物には、それぞれのこころがあって、人間と比較することは出来ない。
それでも、「犬に人間以上の人間臭さ」を感じてしまう人は多いのではないだろうか。
本書の4編の物語を通して、犬と人間の心情の近さを、あらためて強く感じることが出来た。
犬が人間のことをどのように感じているかは、正確には分からない。
ただ、「お互いのことをよく知りたい」という気持ちの投げ合いが、人間と犬の関係を深めてきたことには間違いないだろう。
願わくば、人間同士もこのように関係を深められないものだろうかと、争いの絶えない人間社会を憂えながら思った。
犬の命と人の命で紡がれた、織物のような物語をぜひ。