商品説明
<古書>笹間一夫・著/私家版/1999年2月発行/A5/203頁。
カバー、スレ、少ヤケ、少シミ。天地小口、少ヤケ、少キズ、僅かにシミ汚れ。本文、薄くヤケ。経年並。読書に支障はありません。
文中に図版番号が多くありますが、図版はついていませんので、ご承知おきください。
太平洋戦争以前から戦中、敗戦まで、海軍省において防空建築、耐弾構造物の研究・設計に携わった、ひとりの建築技師の回顧録。
著者は冒頭で、昭和10年から20年までの自分の履歴は空白にしていると書いています。他の建築家、あるいは他の業種においても、この期間の履歴を胸を張って書けるものはほとんどいないのではないかとも。
一介の建築家が、国家の、軍部の、そして戦争のための渦に呑み込まれていく様子が、あまりにもまっすぐに描かれていて、この時代の抗えない得体の知れない力に、それもごく自然に動かされていく姿に、恐ろしさを感じます。
国は昭和10年以前に、すでに防空を意識していたことが分かります。
昭和8年の関東防空大演習のあと、信濃毎日新聞の桐生政次が「関東防空大演習を嗤ふ」という記事で、木造家屋の日本での防空について的確な意見を言っていたことを、後に知ったと触れています。
建築技師としての仕事は、国・軍のための防空・耐弾設計であり、庶民のためには何の役にも立たなかったということを、タイトル「悔恨の建築」に込めたのではないかと、家族が巻末で述べています。
著者は、戦中に義理の父・母・妹を空襲で亡くしており、被弾は竹製の防空壕だったということです。
戦前、戦中の貴重な証言、史料となるのではないでしょうか。